【暮らしの中の家具】ルーツを辿ると見えてくる家具選びとは〜暮らしを豊かにする家具選び(FILT.さん)

日々の暮らしの中で欠かせないもの、大切な家具から雑貨、お花、珈琲なんて方もいるかと思います。


家具を買うときに、材質の種類やメンテナンス、塗装の特徴と言ったことや、お花屋さんに寄った際に、季節の花や活け方、日持ちするの?なんて、値段に差こそあれど、ちょっと知ってるだけで選択肢が広がることが沢山あると思ってます。


そう言った、ちょっと知ってると暮らしに広がりが出る、そんな「へ〜、なるほど〜、そうだったんだ!」と思ってもらえるようなコラムを「暮らしの中の◯◯」シリーズとしてお届けしていきます。 


「暮らしの中の〇〇」シリーズはこちらからご覧いただけます。


良い暮らしを追求する「シェーカー」とは?


執筆者:FILT.さん


みなさんこんにちは。FILT.の反端です。 

最近、良い暮らしってなんだろう、良い家具ってどんなものだろうと、調べていくと「シェーカー」という言葉に辿り着きます。


今回はなぜ近頃、「シェーカー」が注目されているのか、そもそもシェーカーとは何か?に注目してお話ししていきたいと思います。


シェーカー教とは


何を隠そう、FILT.の家具や空間作りはシェーカーを参考にすることが多くあり、"シンプルで洗練されている"そんな空間づくりを得意としています。

(出典:http://www.shakerjapan.co.jp/


18世紀頃、イギリスで誕生しアメリカに渡ったキリスト教より派生したアン・リーを教祖とする宗教団体が「シェーカー教」です。


約220年の間、平等と自治を主義として、独自の生活様式を追い求めていました。宗教なのに「自治」とはとても不思議な感じがしますが、だからこそ現代に語り継がれるまでになりました。


シェーカーの原則は以下の3つでした。

1. 独身主義

2. 俗世からの離脱

3. 財産の共有


中でも「俗世からの離脱」が「シェーカーの暮らし」の鍵となります。シェーカーの中で共同体をつくり、その共同体は外部との接触を避け、シェーカー内のコミュニティのみで暮らしていました。

(出典:シェーカーへの旅 )


洗濯棟、穀物倉、仕事場、家具工房、鍛冶屋棟、馬車倉等の建物があり、畑・・・と、暮らすために必要なものは全て自分たちで賄っていました。生活に必要なものは自分たちで作り、酪農や農業も含めて役割が与えられ、本当の意味での自給自足です。


私有財産を否定し、財産はシェーカーで共有されていたのも大きな特徴の一つです。


シェーカー家具のクラフツマン達

(出典:https://crashgate.jp/fs/crashgate/c/shaker


シェーカー教徒は勤勉でとても素晴らしい職人がたくさんいたようです。それを紐解くと、教団独特の信仰上の要素がありました。


最初に述べたように、シェーカー教はキリストから派生しています。マザー・アンはキリストの再臨とされ、共同体は天上の王国が人の世に再現されたものと信じられていました。


それゆえ、彼らは日頃から全ての時を神とともに過ごしていることになります。つまり彼らにとって、家具作りの仕事は礼拝とまったく同義だったのです。また、お金の心配をする必要がない(財産を共有していたため)ので、ひたすら丹精を込めて誠実に仕上げていきました


これは歴史的に見ても非常に珍しいことで、多くの職人は人のため、経済活動として家具を作りますからね。ですから、彼らの作る家具は非常に純粋で無垢なものでした。


シェーカー家具のデザイン

(出典:eaiainfo


シェーカー家具のデザインはその形態に対する意思も明確に現れています。


神の国が実現したシェーカー社会にあるもの全て、神の名にふさわしく、清潔で質素でなければならない。不必要なものは一切排除するのがシェーカーの大きな原則になっています。


加えて、堕落した人の世に溢れる無駄な装飾や奇をてらったり媚びたりするようなものは不必要でまた不必要に贅沢なものは強く否定されていました。


そのため、一切の虚飾を排除しつつ、その中に美しさを求めていく姿勢がシェーカー家具の本質です


◯シェーカーの格言(抜粋)

1. 労働は神の道に至る

2. 調和の中には大きな美がある

3. 美は実用性に宿る

4. 実用のない美はやがて不快になり絶えず交換が必要になる

5. すべての力は形態を生む

6. なんであろうとも作るものは全て簡素で単純であれ


シェーカーの思想はとても素晴らしく、その思想や家具からインスピレーションを受けて、家具をデザインしていたのが、1900年代に活躍したデンマークを代表するデザイナーのボーエ・モーエンセンです。


シェーカー家具からインスピレーションを受けて


モーエンセンの1947年発表されたダイニングテーブルC18。


T字になった脚と貫、天板で成り立っています。実際に組み立ててみると驚くほどシンプルな構造で、非常に強度が優れている家具なのです。シンプルな構造をより美しくデザインするのがモーエンセンのなせる業です。


シェーカーの家具はもともと、シンプルな構造で作られ、製作の効率が良いことも大切にされていたと考えられていますが、そういった面でもシェーカー家具を参考にされていた大きな理由でしょう。 


因みに、下記写真が当時のシェーカーのテーブルです。

(出典:The Book of Shaker Furniture)


また、特筆すべきはC18テーブルの便利さ。


写真をご覧いただくと、通常ではテーブルの脚と脚の間に椅子を収めますが、両縁の椅子がテーブルの脚をまたいでいるのがわかります。またいで座れるのは、テーブルの幅の中で収まらなくても良いということです。


つまり、テーブルの天板の大きさは必要最低限で良く、座る人数は通常よりも広々と座れる。最小で最大の効率を考えられた素晴らしいテーブルです。


こういった考え方の共通点をシェーカーの思想の中から見出していたかと思います。


続いて、J39チェアは通称“シェーカーチェア”と言われ、その名の通り、シェーカーの家具からインスピレーションを受け、製作されたチェアです。


FDBはデンマーク国民の生活を豊かにするためにできた組織。家具を作る上で「長く使える」「デザインが美しい」「適正な価格」という条件で家具をつくるよう依頼がありました。そして誕生したのがJ39チェアです。


条件をクリアする上でシェーカーの椅子は、脚・貫・座・背もたれの4つのパーツからできており、そのシンプルな構造が条件を満たすために適しています。


見比べると随分違うようにも見えますが、構造を見るとほぼ一致します。唯一大きく異なるのが、背もたれ部分が複数の横向きの材で成されていたものが、一枚の曲木の板に変わったところです。


背もたれが背中にフィットし、心地いい加減の背あたりです。この背もたれのおかげで姿勢を正されるところも、知らず知らずうちにシェーカーの精神を与えてくれています。


シェーカー家具からインスピレーションを受け、より完成されたデザインの名作家具へとリデザインさせたモーエンセンの功績は計り知れず、数え切れない人々の人生を幸せに誘っています。


脈々と受け継がれるデザイン


更にモーエンセンのJ39チェアを尊敬し、ジャスパーモリソンがデザインしたマルニ木工のLight wood。


こちらもまた随分違って見えるかと思いますが、基本的な構造、思想は似ている部分があり、作り手の意図が反映されデザインが変化し、現代のインテリアに合うようにリデザインされたチェアです。 


J39誕生から半世紀を超え、現代のシェーカーチェアとして生まれたLightwood。


逆引きしていき、大元を辿るとシェーカー家具に辿り着く、そして、目指す暮らし方を考えるとやはり一致するのです。


今回お伝えしたかったのは、良い家具にはデザインの意図があり、暮らしを良くするための工夫がたくさん盛り込まれていること


勿論、頭でっかちに知識で固めて家具を選ぶより、感覚で選んだ方が自分に合った家具を選ぶことができると思いますが、家具のルーツを辿ると、デザインの意図がわかり、選び方も変わってきます。そして、より家具が好きになります。


ルーツをたどるのは壮大なタイムスリップのようで楽しいですね。


単純にシェーカーから派生した家具を買うのも良いかと思いますが、暮らしの中でこういった考え方で暮らしていくのも「豊かな暮らし」に繋がると考えています。


今回のコラムでシェーカーにご興味が湧きましたら是非、色々調べてみてくださいね。



今回はとてもディープなお話をしていただきました。


「シェーカー」という言葉は初めて耳にしたのですが、日々の生活に必要なものは全て自分の手で作ることを基本に、その思想が脈々と現代の家具づくりに受け継がれていることを知りました。


様々な条件がクリアされた中で成り立っている、家具たちの背景には“シンプルで丁寧な暮らし”が想像できます。


家庭に馴染みやすく、使いやすい仕様になっているのもステキなポイントですよね。現代ではシェーカーと同じような暮らしは難しいですが、家具のルーツを深く知ることで少しでも近い暮らしができるのではないか、と思いました。


次回のコラムのコアな内容もとても楽しみです。FILT.さん、ありがとうございました。 

(編集:saya)


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